先に正直に書いておく。僕はまだノンフライヤーを持っていない。そして、糖尿病である。
これは使用レビューではない。唐揚げが好きで、糖尿病になってから揚げ物と距離ができてしまった男が、「そもそもノンフライヤーは必要なのか」「糖尿病の自分にとって、本当に意味があるのか」を買う前に確かめた記録である。
糖尿病だけど、たまに唐揚げが食べたくなる。
普段は我慢できている。なのに、ある夕方、スーパーで惣菜の唐揚げを手に取ってしまう。美味そうだ。でも、ふと考えて棚に戻す。家で揚げれば出来立てが食えるのに、なぜ買うことすらためらうのか。
その「たまに」が厄介なのだ。食べたい気持ちは、病気になったから消えるものではない。消えないものを、根性だけで抑え続けることになる。
理由は2つある。揚げるのが面倒なこと。そして、血糖値だ。
油を用意する。温度を見る。揚げ終われば油を冷まして、こして、処分する。コンロの周りには油が飛び、床まで少しぬるつく。その面倒に、糖尿病になってからは「どうせ体にも良くない」という諦めが重なった。
好きなものを、面倒と病気のせいで遠ざける。それが一番つまらない。
家から揚げ物が消えた理由は、味ではない
家で揚げなくなった理由を並べると、味の話はひとつもない。
・揚げ油の用意と処分が面倒
・油はねでコンロと床が汚れる
・揚げている間、鍋の前を離れられない
・糖尿病で、脂質と総カロリーを意識するようになった
つまり、唐揚げが嫌いになったわけではない。作る工程と、体の数字に負けただけだ。
ここに、ノンフライヤーを検討する理由がある。ただし、糖尿病の人間が飛びつく前に、確かめるべきことがある。
ノンフライヤーは「油で揚げない」調理家電である
ノンフライヤーは、高温の熱風を庫内に循環させて食材を加熱する。油の海に沈める代わりに、熱い空気で表面をカリッとさせる仕組みだ。
変わるのは、大きく3つある。
1つ目は、吸う油の量だ。食品成分表では、若どりのもも肉(皮つき)の唐揚げは100gあたり307kcal・脂質18.1gとされている。油は1gで約9kcalあるから、仮に吸う油が10g減るだけでも約90kcalの差になる。揚げ油に浸さない調理は、この差を生む。総カロリーと脂質を抑えることは、体重管理と合併症予防の面でも意味がある。
2つ目は、片付けだ。揚げ油がない。処分も、油はね掃除もない。洗うのはバスケットまわりが中心になる。
3つ目は、火の前に立たなくていいことだ。入れて待つ間に、味噌汁もサラダも作れる。揚げ物の「つきっきり」が消える。
糖尿病の僕が、一番考え直したこと
ここが、この記事で一番大事なところだ。
油が減っても、唐揚げが「食べてよいもの」に変わるわけではない。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、糖尿病の食事の基本は、適正なエネルギー量の中で主食・主菜・副菜を組み合わせ、脂質や食塩を控えることとされている。そして血糖値を上げる主な原因は糖質だ。
つまり、見るべきは油だけではない。
・血糖の主役は糖質量と食べる量だ。ご飯の量、衣の厚さ、個数。ここが決まらなければ、油を減らしても話は半分だ
・唐揚げの衣は、片栗粉や小麦粉、つまり糖質そのものだ。厚い衣は、そのまま糖質の上乗せになる
・下味のみりんや砂糖にも糖質はある。自作なら抜くことも、減らすこともできる
・ポテトは油以前の問題で、じゃがいも自体が糖質だ。ノンフライヤーで作っても、そこは変わらない
・油の減量が効くのは、総カロリー、脂質、体重管理の側だ。合併症予防のために脂質と食塩を控える意味はある。でも、それは免罪符とは違う
裏を返せば、自作には糖尿病向きの強みがある。皮を外す。むね肉を選ぶ。衣を薄くする。下味の甘みを引く。食べる個数を先に決める。野菜の副菜を一緒に出す。出来合いの唐揚げでは中身が見えないものが、自作なら全部、自分で決められる。
ノンフライヤーの価値は「健康になること」ではない。「調整できる唐揚げを、家に戻せること」だ。我慢か、諦めて惣菜に流れるか。その二択を終わらせる調整弁になる。
唐揚げを最初から作るなら、差はもっと出る
冷凍食品や惣菜を温め直すだけなら、話は半分だ。本題は、唐揚げを最初から作る場合である。
揚げる場合は、衣が油をたっぷり吸う。ノンフライヤーなら、吸わせる油自体がほとんどない。そこに上の「調整できる」要素が全部乗る。
最初から作る人ほど、そして中身を調整したい理由がある人ほど、ノンフライヤーの恩恵は大きい。僕はここに一番惹かれた。
注意点。ノンフライヤーなら何でも健康的、ではない
都合のいい話だけ並べる記事は信用できない。注意点も先に書いておく。
加工食品は、加工食品のままである
冷凍ナゲットや冷凍ポテトをノンフライヤーで仕上げても、塩分や添加物は消えない。油が減ることと、食品そのものが健康的になることは別である。糖尿病の人にとって塩分は、血圧の面でも無関係ではない。
焦がしすぎは、別の問題を連れてくる
農林水産省によれば、アクリルアミドは食材のアミノ酸と糖が120℃以上の加熱で反応してできる物質で、温度が高いほど、時間が長いほど増えやすい。じゃがいもなど炭水化物の多い食材を焦がすのは、揚げても熱風でも避けたい。こんがりと焦げは違う。
油ゼロにこだわると、粉っぽくなる
衣つきの食材を完全に油なしで加熱すると、白く粉っぽく、パサつくことがある。仕上がりを左右するのは、少量の油を表面に吹くかどうかだ。それでも使う油は大さじ単位に届かない。揚げる量とは桁が違う。
揚げ物とまったく同じにはならない
正直に言えば、油で揚げた唐揚げの豪快さとは別物である。求めるものが「店の揚げたてそのまま」なら、期待は裏切られる。ノンフライヤーの価値は、同じ味ではなく、調整した唐揚げを家で作る回数が戻ることにある。
本体は大きい。置き場所がなければ買うな
これは家電としての現実だ。後で紹介する候補は、ハンドルと排気口まで含めると奥行36.5cmある。背面には排気のすき間もいる。消費電力も1230Wと大きいので、電子レンジやケトルと同時につかえばブレーカーが落ちる家もある。買う前に、置き場所をメジャーで測る。それができないなら、まだ買う時ではない。
「痩せる家電」でも「血糖が下がる家電」でもない
油が減れば摂るカロリーは減る。ただし、ノンフライヤーで血糖や中性脂肪が下がった、といった公的なデータはない。糖尿病の食事は、指示エネルギー量や治療の進め方が人ごとに違う。この記事は一般的な情報であり、治療の指示ではない。自分の食事の進め方は、主治医や管理栄養士の指導が常に優先だ。
必要がある人と、ない人
必要があるのは、こんな人だ。
・唐揚げが好きで、我慢と惣菜の繰り返しになっている
・油の処分と油はね掃除のせいで、家で揚げなくなった
・脂質とカロリーは抑えたいが、唐揚げ自体は諦めたくない
・衣、部位、個数を自分で調整して食べたい
・置き場所を確保できる
逆に、必要がない人もいる。もともと月1回も揚げない人、オーブントースターで十分に足りている人、置き場所がまったくない人だ。そういう人が買えば、立派な置物になる。
検討候補として調べた1台
買う前に候補を1台に絞って調べた。COSORIのPRO LE 4.7L(CAF-L501)である。https://www.amazon.co.jp/dp/B0B4WBY5R3?tag=norizo3867-22
選んだ理由は、容量と温度と、売れ行きの実績だ。4.7Lの大容量で、最高230℃まで上がる。メーカー表示では、従来の揚げ調理に対して油を85%カットするとされている。バスケットまわりは食洗機対応で、保証は2年。公式ストアの価格は13,980円だった(2026年11月確認。価格は変わる)。
弱点も公式情報から見える。重さは4.54kg、消費電力は1230W。前述のとおり、置き場所と電気の余裕が前提になる。
なお、これは調べた候補であって、使った感想ではない。実際に買って唐揚げを作ったら、作り方の調整も含めて、続編で正直に書く。
「たまに」に、行き先を用意する
食べたくなること自体は、失敗ではない。問題は、食べたくなった時の行き先がないことだ。
行き先がないと、我慢が限界まで膨らむか、コンビニや惣菜の揚げ物に流れる。どちらも、中身の調整はできない。
家に調整できる作り方があると、「たまに」の扱いが変わる。禁止ではなく、次の機会に、決めた量を、決めた作り方で食べる。それなら我慢は「永遠にダメ」ではなく、「今日ではない」に変わる。
糖尿病の食事は長く続けるものだ。続けるためには、好きなものを完全に消すより、たまの行き先を用意しておく方が現実的だと、僕は思う。
結論。必要性は「調整できる唐揚げが家に戻るか」で決まる
ノンフライヤーの必要性は、痩せるかどうかでも、血糖が下がるかどうかでも決まらない。
面倒と病気のせいで家から消えた唐揚げが、衣と量と部位を自分で決めた形で、もう一度、普通の夕飯に戻るかどうか。そこだ。
糖尿病だから一生唐揚げなし、では長く続かない。かといって、油が減るから無制限、でもない。その真ん中の、調整して食べる暮らしを取り戻す道具としてなら、ノンフライヤーには十分に存在理由がある。
買うかどうかは、置き場所を測ってから決める。僕も、まずメジャーを手に取るところから始める。
